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この話はパラレルな設定となっています。
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新一の指示に従って、服部は白鳥と会見した。
優作の目を盗むように、なにげなく。
そして、白鳥は呆気無く新一の手に堕ちてきた。
そうまでして『社長』になりたいのか、と服部にまで思わせる程に。






「しかしなぁ、なんちゅうか……見事なもんや……」
服部は家に戻ると蘭に、いかに新一の分析が見事であるか毎日話して聞かせた。
「工藤のファックスにライセンス部門のことが書いてあったやろ?」
焼き魚を箸でつつきながら、服部は興奮したように話す。
新一から来たファックスには、それは細かくどんな話を白鳥とすべきか、白鳥がどう返してくるかによって服部がどう対応すへきかが段階ごとに書かれていた。
蘭もそのファックスには目を通していたので、それを思い返しながら頷いた。
「うん。確か規模を縮小するとかっていう……」
「せや。今日そのことをな、白鳥ハンに言うてみたんや」
服部は機嫌よく、ご飯を頬張ると、話を続けた。
「そしたらや!工藤の言うた通りに答えが返ってくるんや」
服部と新一の関係はいままで義兄弟で恋敵という私怨でしかなかったから、新一のビジネス手腕というものを服部は知らなかった。
だが、この一件でそれをまざまざと見せ付けられたように思う。
ちょっとした出来心で、「黒羽快斗のデザインは盗作じゃないのか?」と根拠のないネタをある雑誌の編集者に語ったことがあった。
ちょうどその頃に蘭が自分の元で働くようになり、いつのまにか『名誉毀損』の話がうやむやになってしまったのだ。
いまになって、服部は命拾いをしたのだ、とつくづく思う。
あの時、全面的に争っていたならば、いまここでこうして蘭と笑ってはいられなかったろう。
おそらくは二度と立ち上がれない程に、叩き潰されていただろう。
血を分けた兄弟だとは、いまだに思いたくはないけれど、新一個人の力というのは認めざるを得ない。
(いまならわかるわ……。黒羽が成功したんは『KUDO』の力やない。工藤の力や。事実、工藤が去った後の『KUDO』は虫の息やんか……。ほんまに怖いんは、あの男やない。工藤の方や……)
服部が手も足もでなかったあの優作さえも手玉に取ろうとする新一の手腕に、服部は感心するとともに畏怖を抱く。
敵に回さずにすんだことに、心からホッとしていた。
「………服部君?」
なにやら考え込んでしまった服部に、蘭は首を傾げて話し掛ける。
「なぁ……、ほんまに俺を選んで、後悔せぇへん?」
「なんで?なんでそんなこと聞くの?」
「悔しいんやけど、工藤がごっつ凄いヤツやってこと、思い知らされたんや……。蘭ちゃんはずっとそないな工藤のことが好きやったんやろ?」
「もぉ〜、服部君ったら……。どんなに新一が凄い人でも、私は幸せじゃなかったよ?私も新一を幸せにはしてあげられなかったし」
蘭はコポコポと湯呑みにお茶を注いで、服部の前に置いた。
「蘭ちゃん……」
湯呑みを手にして、服部は蘭の顔を見つめた。
蘭は満ち足りた笑顔を見せている。
「私、いま幸せだよ?愛する人がいて、愛してくれる人がいる……。ホントに幸せ……」
「蘭ちゃん……、あんな……」
「な〜に?」
「全てが片付いて、大阪行ったら……」
服部は照れくさそうに俯いた。
「……そしたら、ちゃんと籍入れよ?な?」
「服部君………、ありがと……」
蘭の瞳が潤む。
幸せに満ちて。
「なんや……、泣くことないやろ……」
「うん……、でも……」
感極まった蘭の目から、幾筋もの涙が溢れた。
服部は、そんな蘭の肩を抱き寄せると、ゆっくりと唇を重ねるのだった。





















翌日、『RED コーポレーション』のオフィスで、新一は蘭と電話で話をしていた。
「そっか……、万事順調にいってるようだな」
「うん。もう毎日いろいろと話してくれるよ?白鳥さんとどんな話をしたかとか……。で、服部君、新一のことすごく誉めてた。凄いヤツだって……」
「……………」
「新一が言った通りになるんだって」
思惑通りに白鳥が踊ってくれていることに、新一はホッと胸を撫で下ろした。
「それでね……」
「ん?どうした?」
蘭の言葉が続かないことに、新一は短く蘭を促した。
「全部終わったら、籍入れようって……」
嬉しそうに蘭は呟く。
電話の向こうではにかんでいる蘭の姿が目に浮かぶようだった。
「よかったな、蘭……」
「ありがとう、新一。新一のおかげだよ?」
「バ〜ロ、まだ終わってねーぞ?あの父さんが相手だからな。気抜くと、足許掬われるぜ?」
「うん……」
そう答える蘭の声は、気を引き締めようとはしているのだろうが、やはり弾んでいる。
「じゃあな。また何かあったら連絡しろよ?」
「わかった」
小さな溜息混じりに新一は受話器を置く。
僅かな罪悪感を伴って。
(わりぃな……、蘭……)
大切な幼馴染みではあるけれども、それだけでここまでしてやったわけではない。
快斗が見抜いた通り、新一には新一の思惑がある。
新一の思惑通りに踊ってくれてるのは、白鳥だけではなかった。
服部と蘭もまた、新一の手の上で踊っているのだった。






「社長、よろしいでしょうか?」
晴れて『KUDO』を退職し、新一の元で哀のマネージメントを勤める宮野明美が顔を出した。
「あぁ、どうだ?」
「順調です。立ち上げ時の商品ラインナップもほぼ確定しました」
「あぁ、書類は見た。あれなら問題ないだろう」
「なんですが……、肝心のショップが……。原宿はもう飽和状態で……。新しいところは竹下通りからかなり離れてしまいますし……」
宮野は途方にくれたように、新一に相談した。
けれど、新一はニヤリと笑っている。
「その件はこっちに任せてくれ。当てがあるんだ」
「わかりました。それから、こちらがプレスに配付する資料の草案なんですが……」
「わかった。後で目を通しておくから」
「お願いします」
宮野は一礼して、その場を辞した。
新一は、冷めかけたコーヒーに手を伸ばすと、一口口をつける。
(そろそろ一気に片をつけるか……。快斗のショーまで、日もねぇし……。さてと、どっちを先にするかな……)
新一は心の中でクククッと楽し気に笑った。






またしても短かめ。
なにやら企む新一君、けっこう腹黒だったりする……(笑)。

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