「新一に飽きた。それだけ」
───飽きてなんかいないッ!いまだって、愛してる。
「いいよ、別に。殴ったっていいよ?それで新一の気が済むんならさ」
───そう、殴っていいよ……。これは俺の罪だから……。
「……………俺の顔を、見るのも……イヤ、か」
───違うッ!そうじゃないんだ……。眩しすぎるんだよ、新一が……。眩しすぎて見れないんだ……。
「じゃあな……」
───しんいち……。…ぃ…ゃ…だ……、しん…いち……。イヤだぁーーーーーっ!!!
††† 聖夜 ††† 闘いの日〜side Kaito
「しんいちぃーーーっ!」
自分の声で目が覚める。
ボーっとした頭を振って、ようやく俺は夢に魘れていたんだと自覚した。
「こんなんで大丈夫かよ……」
自嘲しながら顔を洗い、気合いを入れる。
水が出るだけマシ、ていうような廃ビルだから、当然お湯なんか出るわけがなく、手に当たる水は切れそうなほどに冷たい。
ペチペチと顔を叩いて眠気を払う。
「寝不足でドジったら、新一のせいだかんな〜」
なんてボヤいて、ズキリと心が痛くなる。
新一のせいなんかじゃない。
俺のせい。
全ては俺の罪なんだ……。
まだ夜が明ける前の北の街。
多くの人々を魅了していた光のケヤキ並木も、いまは真っ暗でひっそりとしている。
「う〜っ、さむッ!」
俺は一つ身震いすると、冷え冷えした街中を駅に向かって歩いた。始発電車は俺をさらに雪深い場所へと運んで行く。
ボックスシートに身を埋めて、俺は車窓を流れる景色を見つめていた。いよいよだ……。
いよいよ、俺は親父の仇を討つ。それは、俺の願い。
それは、俺の誓い。ようやくそれが果たされようとしているのに、俺はちっとも嬉しくなかった。
俺は帰るべき場所を失ってしまったから……。
なにも言わずに新一の前から姿を消したのは、俺の自分勝手な思いだ。
危険に巻き込みたくないからと、自分勝手に姿を消して。
それでいて、運よく命が繋がって、ひょっこり彼の前に姿を現したら、もう一度俺を受け入れてくれるんじゃないか……。
そんな甘い思いがあったことを、俺は否定できない。
けれど、もうダメだ……。
「飽きた」だなんて、これっぽっちだって思っていない。
なのに、俺は新一にそう言ったんだ。
そうでも言わなければ、新一を……あの蒼い慧眼をごまかすなんてできやしない。
だから、俺は新一に……、いや自分の気持ちに嘘をついたんだ。
雄大な自然の山々を背に無機質なコンクリートの建物が立ち並ぶ。
とある大手企業の名を冠した研究所だ。
だが、ここが名前通りの場所ではなく、パンドラを狙う組織の武器庫であり、本拠地であることは調べがついている。
俺は白い衣装を身に纏い、警備員を眠らせてセキュリティーを解除すると、敷地の中に忍び込んだ。問題なのはこれからだ。
警察相手にお宝を拝借して、確認したらサヨウナラってわけにはいかない。
なんせ今回のお宝は組織が持つ膨大なデータ。
ただ、それを頂けばいいってわけじゃない。
ここをブッ潰す。
それだけじゃ、まだダメだ。
トドメをささなきゃ……。
二度と組織が息を吹き返せないように……。
いや、それこそが目的。
最悪、お宝はここと一緒にぶっ飛んじまってもいいんだ。そうさ……。
生きて帰ることになんの意味がある?
生き残ったところで俺にはもう待っている人なんかない。
愛する人を裏切ったのは俺。
安全な場所へ置き去りにしたのは俺なんだから。
ここで果てても構わないさ。
ホラ、聞こえてくる。
地獄の使者の足音が……。「怪盗キッド!!!」
「お待ちしてましたよ。では最期のショーの幕開けといきますか」
俺は手の中にあるリモコンのスイッチを押した。
ドーンという重低音がして、真っ先に武器庫を吹き飛ぶ。
敵がいっせいに構えていた銃をブッ放してきた。
こんな雑魚に構っている暇はない。
俺は鉛玉をかわし、さらに奥へと進んでいった。
紅に染まっていく白い衣装。
それは俺の罪の色。
もう何人殺したのかわからない。
激しい攻防は、いまなお続いている。
「よくぞ、ここまで辿り着いたな、怪盗キッド」
背後で不敵な声があがる。
シマッタ、と思うには遅すぎた。
そいつは真っ直ぐに俺の心臓に狙いを定めている。
「パンドラを渡してもらおうか」
左手を突き出して、男が一歩前にでる。
その間にも、新手が現れ俺は囲まれてしまう。
万事休す。
どうやってこの状況を打開しようか?
相手の男を見据えながらも頭をフル回転させていると、突然バーンという銃声とともに目の前の男が崩れ落ちた。
(え…………?)
突然起こった事態が飲み込めないまま、俺は銃声のした方を振り仰いだ。
(う…そ…、だろ……?なんで……、ここに……?)
俺の視線の先には、最も大切な人―――工藤新一がライフルを構えて立っていた。
パン、パーンと続けざまに銃声が轟く。
俺の驚きなんか無視して、俺を囲んでいた男達が新一に向けて銃を発射したのだ。
新一はライフルを投げ捨てると、物陰に隠れてそれをかわす。
まるで俺の周りだけ時間が止まったかのように、俺は呆然とその様子を見ていた。そして……。
「名探偵ーーーっ!!!」
新一の身体がグラリと揺れた───。
to be continue……
あぁ!新一君が傷物に……!(←違)
Eve〜side Shin-ichi Christmas side Shin-ichi