-12-

この話はパラレルな設定となっています。
登場人物の紹介はこちら




ティーンの街・原宿にも酒を提供する店はある。
服部は日本モード界でも権威ある『モードデザイン・コンクール』に出品するためのデザインに煮詰まって、近くの店に飲みにきていた。
洒落た造りの洋酒を扱う店が多いなか、地酒を飲ませてくれるこの店が服部のお気に入りだった。
小料理屋で育った服部には、どうにもバーだのカフェだのというのは馴染めなかったのだ。
「あ〜〜〜っ、なんでや。なんで、こう集中でけんのや!」
イライラとコップに入った日本酒を呷ると、頭を掻きむしった。
どうにもダメなのだ。
青山のバーで工藤新一が黒羽快斗と性的なものを仄めかすようなスキンシップを交わしているのを目撃して以来、どうにもあの二人が脳裏にちらついて、ダメなのだ。
いや、あの二人がどんな関係であろうと、服部は構わないのだ。
男同士ということに「きしょい」とは思うが、自分がするわけではないのだから。
だが、あの二人の影で蘭が悩み、思いつめ、涙を流しているのだと思うと、どうにも許せない気持ちでいっぱいになり、デザインに集中できないのだった。
「おやぁ?服部君だろ?H2の」
いきなり声をかけられて、服部は声の主を見た。
服部の店の近くでギャラリーを営む高山という男だった。
たいして親しい中ではないが、近くの喫茶店でモーニングを食べてる時に、一緒になったことが何度かあった。
「どーも」
「意外だねぇ、若い子の服をデザインしてる君が、こんな親父くさい店にくるとは」
「家が小料理屋しとるんで」
「へぇ〜」
高山はまたまた感心したようだったが、服部の前に置かれた灰皿に吸い殻が山のようになっているのを見て、眉をしかめた。
「服部君、君いつぐらいからここで飲んでるんだね?」
「さぁ〜?かれこれ1時間ぐらい前やろか?」
「1時間?」
「どないしました?」
服部は、高山のなにやら考え込んだような表情に気がつくと、そう問い返した。
「いや、私が店を閉めようかと表に出た時に、君の店の前に女の人が立ってたんだよ。ここへ来るときにはもういないようだったけど、なんか様子がおかしくてねぇ」
「おんな?」
「ほら、最近君んとこ働いてるあの気立てのよさそうな子」
「高山ハン!様子がおかしいて?」
バンと立ち上がって、詰め寄る服部に高山はたじろいだ。
「いや、その、なんかこう夢遊病者みたいにふらふら〜っとしてて…」
「おおきに!」
服部は慌てて荷物をまとめると、財布から五千円札を抜いて、レジに置いた。
「釣りはとっといてや!高山ハン、今度うちの店きたってや!勉強しときます!」
飛び出していく服部の様子を見て、高山はあっけにとられた。
「勉強する…って、私にあの店で何を買えっていうんだ?」







服部が店に戻ると、通用口のところで蘭が凭れ掛かるようにして座っていた。
「蘭ちゃん!」
「…服部く…ん」
蘭は感極まったように服部にしがみついて、わぁわぁと泣き始めた。
「ら、蘭ちゃん。とにかく中へ入ろうや?」
泣きじゃくる蘭の肩を押して、店の奥にある事務所へと入っていった。

蘭を事務用デスクの椅子に座らせ、コーヒーを出す。
「蘭ちゃん、なにがあったんや?工藤が…、アイツがなんかしたんか?言うてくれん?な?」
コーヒーのカップを握りしめたまま、蘭は俯いている。
何も言わない蘭に、服部は溜息を溢した。
「…えぇわ。言いたないんやったら、無理には聞かん」
それでも服部にはなんとなく検討がついていた。
工藤と黒羽、あの二人に関係があるのだ、ということを。
服部がそれを知っていることは、蘭には言わなかった。
「なぁ、蘭ちゃん。嫌なことがあったんやったら、忘れてもうた方がえぇ。俺が忘れさせたる…」
服部は、蘭を抱き締めると、その唇を奪った。
さすがに蘭も慌てて、服部の身体を引き離そうとした。
だが、所詮女性の力ではそれは適わなかった。
服部はさらに強く蘭を抱き締めてくる。
「好きや…」
僅かに唇が離れ、短い言葉が呟かれると、また唇を奪われた。
抱き締める手が、蘭の身体を愛しむように這い回る。
息苦しさに、身体中の力が抜けて蘭の身体が崩れ落ちそうになるのを支え、抱き上げた。
「愛しとる…、蘭ちゃん…」
服部は、仮眠用のソファベッドに蘭の身体を押し倒した。
「いやっ…、やめ…て…服部く…んっ…!」
強引に開かれていく行為に抗いながら、蘭の思考は混乱し始めていた。
(愛されたかった…。こんな風に激しく…、新一に愛されたかった…)
蘭の思考に蘇る快斗の言葉。

     「新一が一番欲しいのは『家庭』なんだよ」

「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
「蘭ちゃん?」
蘭の悲鳴に、服部も躊躇いをみせた。
だが、蘭は目を閉じたまま服部に手を伸ばし、その身体を抱き寄せた。
「蘭ちゃ…ん…」
服部は再び蘭の唇を貪ると、その身体に舌を這わせていった。







(あつ…い…、身体が蕩けるように…)







(この熱は…なに…?)







(身体が、浮いていく…)







(私を包み込んで…)







(私はいま、愛されてる…)










(しんい…ち…)







蘭はそのまま服部の腕の中で気を失った。
















蘭を抱いて、幸福の絶頂へも昇るようだった服部は目にしたものに呆然としていた。
(うそ…や…ろ…)
ソファベッドに小さくついた赤いシミ。
それは、処女の鮮血だった。






快新度ゼロです。しかも、平蘭…。


BACK RED-INDEX NEXT