Egoist
=前編=
欲しいものができた。
どうあっても手に手に入れたいもの。でも、完全にこの手に掴むためには、たくさんの障害もあって。
それらをひとつずつ片付けなければならない。「面倒だな・・・・・」
そう言いながらも、楽しげに笑う自分がいた。
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「お前、傘持ってないのか?」
いきなり声をかけられたほうは、驚いてその人物を見つめた。
急に降り出してきた雨に、傘を持っていなかったため走って近くの店の軒下まで行った。
しばらくそこで雨宿りをしていたのだが、一向に止む気配がないため、
走って帰ろうとした矢先に声をかけられた。
それだけならまったく驚かない。
だが、声をかけてきたのはよく新聞で見かける有名人。
自分にとっては厄介なライバルでもある名探偵。
自分に似ているようで似ていない人。
「工藤、新一・・・?」
「え?俺のこと知ってるのか?」
「知ってるのって・・・あんた有名人だろ?自覚ないのか?」
「・・・そうなのか?」
きょとんとしている新一に思わず笑いがこみ上げる。
たとえ有名人じゃなくても、自分にとっては忘れられない人。
姿が見えなかったジョーカー。
「今学校の帰りなのか?」
「ああそうだよ。」
新一が着ているのは雨の中でも映える青いブレザー。
それが瞳の色とマッチしていてよく似合う。
「お前びしょ濡れだな。このままだと風邪ひくぜ?」
「いきなり降ってきたからさぁ。」
「俺の家、この近くなんだけど、よかったら寄ってくか?」
「・・・・いいのか?」
「ああ。当分やみそうにないし。雨宿りしていけよ。」
「・・・・じゃあお言葉に甘えようかな?」
まさか名探偵の家に招かれるとは思ってもみなかった。
でも、相手はずっと気になっていた人物。
これはラッキーかも、と思いながら新一の傘にお邪魔する。
前を向いていたために、新一の唇が楽しげに歪んだことに気づかなかった。
「・・・でけぇ・・・・あんた、金持ちだったんだな・・・・」
「俺じゃねぇよ。親の金だ。」
「ああ、そういえば父親が推理作家だっけ?」
「それより早く入れよ。え〜と・・・」
「あ、黒羽。黒羽快斗だよ。紹介が遅れたね。」
「じゃあ黒羽、風呂沸かすから、ちょっと待ってろよ?」
「え?いいよ別に。」
「よくねぇよ。ちょっと待ってろ。」
快斗を玄関で待たせて2階に上がり、大きめのタオルを持ってきて快斗へと渡し、
今度は1階の奥の方へと消えていった。
「律儀なやつ・・・」
そういいながらも、快斗は笑っていた。
「なんだまだそこにいたのかよ?さっさとはいってこいよ。」
「でも着替えは・・」
「俺のを貸してやる。見たところあんまり身長かわらなそうだからな。」
「じゃあ、遠慮なく」
快斗は風呂場へとむかった。新一は快斗の服を乾燥機に放り込み、自分の服を置いておく。
数分後、新一が用意した服を着、頭からタオルをかけて快斗がリビングに入ってきた。
「サンキュー、助かったよ。でも、この服少し小さいんだけど・・?」
「・・・文句言うなら着るな」
外見は同じように見えても、実際は違ったらしい。
拗ねたようにそっぽを向いた新一に快斗は微笑んだ。
「ごめんごめん。拗ねるなよ」
「拗ねてねぇよ・・・お前の服、今乾かしてるから、終わるまで座って待ってろよ。」
「なにからなにまでわりぃな。」
「気にすんなよ。コーヒー飲むだろ?」
「あ、砂糖とミルクたっぷりで。」
「・・・・よくそんなの飲めるな」
ま、いっかと新一はキッチンへと入っていった。
探偵と馴れ合う怪盗って変だよな、と思いながらも顔が緩むのをとめられない。
結構居心地がいいかもしれないと思ってしまっている。
「やばい、かな?」
でもまあ、いいか・・・
「なに一人でにやついてるんだ?あぶねぇやつ・・・」
「ハハ、なんでもないよ。ところで、推理小説化の家だったら、小説の量も半端じゃねぇだろ?」
「まぁ、色々あるぜ?興味があるのか?」
「まぁね。読書は好きだから。」
「じゃあ書斎、見てみるか?」
「ホント?やったね♪」
新一の案内で書斎へと向かう。その中はたくさんの書籍で埋まっていた。
「想像以上にすげぇ量だな・・・あ、これ読みたかったやつじゃん。あ、これも!」
「・・・持っていくか?」
「え?借りていいの?」
瞳を輝かせる快斗に新一は苦笑する。
「いいぜ?読み終わったら、また来ればいい。」
「ホントに?ラッキー!ここ、もしかしたら図書館より品揃えがいいかもな。」
そのあとも、ふたりでいろんな話をして、あっというまに夜になってしまった。
いつのまにか雨もやんでいる。
「長居して悪かったな。」
「いや、楽しかったし。」
「じゃあこれ、借りていくな?また来てもいいんだろ?」
「ああ。いつでも来いよ。あ、でもいないときもあるから、来る前に連絡してくれ。これ、俺の番号。」
「ありがと。じゃあ、また来るな!」
「ああ、気をつけて帰れよ」
帰っていく快斗の背を見送ったあと、新一はドアに凭れた。
「まずは、第一段階終了、か?」
そういって笑う新一の笑顔は、先ほどとは違い、どこまでも暗く歪んだものだった。
「必ずこの手に・・・怪盗キッド・・・・・」
To Be Continued・・・・
02/1/18GALLERY 後編