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地球軍新造戦艦アークエンジェルは、セイレネス隊こと美少女3人組によって制圧され、いまはAIによる自動航行でプラントの首都アプリリウスに向かっている。
キラが開発したAIは非常に優秀で、戦艦の運航に関してはド素人同然の3人しかいなくても、なんら問題はない。
おかげでヒマをぶっこいていた3人は民間人の子ども達と遊んだり、捕虜房に放り込んだクルーたちをからかったりして日々を過ごしている。
先日も子ども達とアレなものを作って、某隊長をからかって遊んだ。その勢いで、3人は捕虜房を訪れたのだが、その時、『エンデュミオンの鷹』ことムゥ・ラ・フラガが挙動不審な態度を見せたため、尋問……というよりは、からかいのターゲットとして、ロックオンされたのである。
手作りとはいえ怪しい仮面を装着したままの3人に、百戦錬磨だったハズの『エンデュミオンの鷹』も呆気なく陥落した。
鷹曰く、「お前さんたちのそのふざけた仮面を見ると、語るのもおぞましいぐらい嫌〜な因縁があるヤツを思い出しちまうからだ」だそうだ。
それを聞いた3人が、その『語るのもおぞましいぐらい嫌〜な因縁』とやらに興味を持たないハズはない。
かくして、エンデュミオンの鷹はさぶいぼを立たせながら、その因縁を語るハメになる。ラゥ・ル・クルーゼに危うく貞操を奪われそうになったのだという……。
3人の美少女はブリッジに戻ってくると、お茶……と言っても無重力なので、宇宙用のドリンクだが……を飲みながら、目を爛々と輝かせながら、仕入れたばかりのネタについて話し始めた。
「私、クルーゼ隊長はお稚児趣味なのだと思っておりましたわ」
ラクスがホォ〜と溜息をつきながら、口火を切る。
「そうねぇ〜。確かにクルーゼ隊は、顔のいいのが揃ってるし。昔っから、軍ではよくあることだって言うし」
ミリィが同意を示す。
「でしょう? アスランなんて、クルーゼ隊長に随分とかわいがられているようですし……」
「あのアスランが?」
キラにとって、例え現在のアスランがヘタレであっても、幼少の頃のアスランは頼りになる幼なじみだ。
だから……ついつい、3人は想像してしまった。
『隊長! 何をするんですッ!』
『フフフ、隊長命令だよ、アスラン。大人しく、足を開きたまえ』
『や、やめてください、隊長! 俺には、婚約者が……あぁンッ!』
『若いな、アスラン。君のココはもうこんなになっているぞ?』
「……確かに、ありそうな話かも」
「でしょう?」
「簡単に言うけど、ラクスはイヤじゃないの? 自分の婚約者がそんな目にあってたら……」
言っておくが、決して事実ではない。あくまでも3人の少女達の妄想である。
「別に。むしろ、萌えですわ♪」
ラクス・クラインは腐女子だった。ラクスはニッコリと笑って、更なる爆弾を投下する。
「他の方でも、萌えますわよ?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、ラクス! それって、イザークも狙われてるってこと!?」
キラは大きな目をさらに瞠いて叫んだ。確かにイザークの顔はエザリア譲りの美貌で、キラでも見惚れるぐらいに美しい。
でも、やっぱりイザークは男で、キラの婚約者だ。
「僕のイザークが……クルーゼ隊長の毒牙に……?」
「ありえないことではありませんでしょう? ちょっと想像してみてくださいな♪」
楽しそうに言うラクスの言葉に乗っかって、ついついキラはイザークでアレなシーンを想像してしまう。
『隊長! 何をするんですッ!』
『私を蹴飛ばすとは悪い子だね、イザーク。なんなら、縛ってあげようか?』
『って、なんですか、そのロープはッ! いくら隊長でも……ゥッ!』
『似合っているぞ、イザーク。君ほど拘束具が似合う人も居まい』
ゴックン。
キラは思わず生唾を飲み込んだ。
「イザーク……。僕、君にどんな過去があっても、大丈夫だから……」
胸の前で手を組みかわいく言ったところで、イザークは嬉しくないだろう……と、ミリィは心の中でツッコミを入れた。
再度言っておくが、決して事実ではない。あくまでも3人の少女達の妄想である。この場にイザークが居たら、「勝手に過去を作るなぁ〜ッ!」と激怒したことだろう。
「まぁねぇ〜、イザークさんはキレイ顔だから、変態仮面隊長とでも絵になるケド、ディアッカじゃ、コントにしかなんないわよ〜」
ケラケラと笑いながら、ミリィが一笑に付す。今度はディアッカで想像してみてしまう3人であった。
『た、隊長?』
『大人しくしていたまえ、ディアッカ』
『イヤですよッ! 俺、ヤるのは好きですけど、ヤられるのは遠慮します!』
『ほぉ〜。では、君にヤってもらおうか……』
『え゛……?』
- しつこいようだが、決して事実ではない。あくまでも……以下同文。
だが、ハッと我に返ったキラが叫んだ。
「ちょっと待ったぁ〜!」
自分達の妄想で、キラは大事なことに気づいたのだ。
「僕たち、大事なことを忘れてない?」
- 「大事なこと……ですか?」
- 「うん。そもそもクルーゼ隊長って……上なの? 下なの?」
「「……………」」
3人の少女達の間に、短い沈黙が訪れた。
「フラガ少佐が『貞操を奪われそうになった』って言ってたから、僕達、ついつい上だと思っちゃったけど、あのフラガ少佐だよ? 下で悶えてるのって萌える?」
いつのまにか、キラもラクスに毒されて腐女子な発想全開である。しかも、自覚はゼロだ。
「確かに……ビミョーよね」
- ムゥ・ラ・フラガは、典型的なナチュラルの軍人体型。どちらかといえば、マッチョと呼ばれる方だろう。
- 対して、ラゥ・ル・クルーゼは、コーディネーターらしいザフトの軍人にはありがちなスリムな体型である。
「キラの言う通りですわ〜。むしろ、クルーゼ隊長が悶えているほうが、萌えます!」
「でしょでしょ?」
「でも、あれだけ怯えてる少佐にヤらせるのって無理があるんじゃない?」
「あら、そんなことどうとでもなりましてよ? 拘束した上で乗っかるとか……」
プラントの歌姫がそんな発言を噛ましていいのだろうか? プラント市民にはとてもじゃないが聞かせられない。
- が、キラもミリィも、ラクスの本性を知っているから、全くもって気にしていない。
「ねぇ……」
「そうですわねぇ〜」
「う〜ん……」
「どっちがどっちなんだろう……」
「どっちがどっちなんでしょうねぇ〜」
「どっちがどっちでも、見たいモンじゃないわね……」
3人は腕を組んで悩み始めた。延々と悩んだ挙げ句、キラが「は〜い」と手を上げた。
「僕、『クルーゼ隊長は下』に一票! ミリィ、気をつけなよ? ディアッカさん、狙われてるかも〜」
「あら、アタシは『クルーゼ隊長は上』に一票よ。だって、変態プレイが好きそうじゃない♪」
「私は……『どちらもOK』に一票入れますわ〜。アスランやイザークさんなら上、鷹さんやディアッカさんなら下、ですわ。だって、その方が萌えなんですもの〜♪」
「ちょっと〜、票割れしちゃってたら、結論が出ないじゃないか〜」
「いいじゃありませんか♪ 萌えは人それぞれですし……」
- 「萌えの問題じゃないよぉ〜。真実が知りたいのに〜ッ」
「ねぇ……二人とも。本人に聞いてみる、っていう選択肢はないの?」
「それですわ〜!」
「そっか! 僕に任せてッ!!」
キラは嬉々としてヴェサリウスへと通信を繋ぎ始めた。
「隊長、アークエンジェルから通信です」
「……私は仮眠中だ」
なんだかいや〜な予感がしたクルーゼは咄嗟に居留守を決め込んだ。
「もう、繋がってます……」
居留守を予期していたキラが、それを許すわけがない。強制的に繋がるようにハッキングでシステムを弄っておいたのだ。
『クルーゼ隊長〜!』
『居留守は許さないわよ〜』
『それに……私達、隊長にお伺いしたいことがございますの』
「な、なんですかな?」
思いっきり狼狽えながら、かろうじてポーカーフェイスを装う。仮面をしていてよかった……と思うことが、ここ数日何度もある。
もっとも、セイレネス隊の3人にしてみれば、仮面の下からタラリと滴る冷や汗でご飯3杯いけそうなほど、笑わせてもらっているのだが。
『『『ラゥ・ル・クルーゼ隊長に質問です。ズバリ、上ですか? 下ですか?』』』
クルーゼの仮面がズルッと落ちた……ような気がした。
その後、ヴェサリウスでは、自室のロックは厳重にするようになったという。
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