ナンデモナイコト presented by 深流
「えーと後は・・・」
手にしているメモへ視線を落す。
言われたままを書き記したため、様々なものが書かれている。
数種類の野菜に始まり、精肉、卵、乾物類、レトルト食品、衣類品等々。
「残すは替えのシーツとタオルか」
確認するとメモを無造作にポケットに突っ込み、歩き出す。
☆
ただ今AM11:00。
いつもの工藤新一であればまだ眠りの世界にいる時間。
その新一が何故、こんな早い時間に買い物に来ているかといえば、原因は同居人(新
一談)である黒羽快斗が
突然熱を出し、床に臥せっているためである。
快斗が何もしなければ食べるものはおろか、生活に必要なものさえない始末。
仕方なく新一が買い出しに出て来たのである。
もちろん「ええー?!新一を一人で外に出す事なんて出来ないよ〜!」と縋って一緒
に行くと言い張った快斗を
蹴倒してきたのは言うまでも無い。
「ったくだから気をつけろと言ったんだ。ただでさえタチの悪い風邪が流行ってんだ
からさ」
ブツブツと愚痴を言いながら歩いている。
「ああ、タオルはここか」
陳列棚に置かれているタオルを無造作に選ぶ。
「これだけあればいいか」
会計を済ませようとレジへ向かいかけ、ある一角で足を止めた。
目に入ったのはクリーム色と紺色のお揃いのパジャマ。
(へーなんかいい感じだな)
新一はそのパジャマを見つめていた。
(アイツに似合いそうだな・・・)
クリーム色は彼が夜に纏う色よりも暖かそうな色で。
(これならアイツを包んでくれそうだな・・・)
自分の考えに思わず顔を赤らめる。
(何考えてんだ・・)
慌ててレジ、レジと向きを変えたとき、
「それ気に入られました?」
声をかけられた。
「?」
振り向くとにっこりを笑顔を浮かべた店員が立っている。
ソレ、が何を指すのか気づいて
「ええ、まあ」
曖昧に答える。
「もしかして恋人とご一緒に着られるのですか?」
その言葉に思わず固まる。
(い、いま何て言った・・・?)
「そうですね・・・お客様には紺色がいいかいしら?それに細めだからMサイズで
ちょうどいいかもしれませんね」
はい、と紺色を渡される。
「はあ」
条件反射で受け取ってしまう。
「メンズ用だからお相手の方もMサイズでいいわね」
そう言いながらクリーム色のパジャマを差し出された。
最後にニッコリと微笑まれて
「あ、あの!」
「あら?違いました?」
困った顔をすると
「このパジャマを見られてる貴方がとても良い表情をされてらしたから」
「?」
「どなたかの事を考えられてたのでしょう?」
完璧なる営業スマイルを向けられ
「・・・一緒に下さい」
「ありがとうございます」
新一の手からタオルとパジャマを受け取り揚々とレジへ運ぶ。
☆
「どうやって渡すんだよ・・・」
タオルは店のロゴが入った紙袋に入れたのにパジャマだけは何故か綺麗にラッピングされご丁寧にリボンまでつけられていた。
流石に自分の分はタオルと一緒になっていたが。
「どうしようかな・・・」
とぼとぼと歩きながら溜息をつく。
☆
「ご馳走様vv美味しかったよ」
もう大丈夫、とばかりに笑顔を見せる快斗。
「・・ああ」
食べ終わったトレイを受け取り、片付けのため立ち上がる。
部屋を出て行こうとして部屋の隅に置いていた紙袋から例のモノを取り出すと
「・・・快斗」
「何?」
「やるよ」
ポイッと投げた。
「へ?新一?」
名前を呼んだときにはもう姿は無かった。
手に受け取ったものは綺麗にラッピングされたモノ。
とりあえずガサゴソと包みを開けてみる。
「これパジャマ?」
クリーム色でとても肌触りがいい。
「着替えのため?かな」
それにしては包装が過剰な気がする。
「とりあえず着替えよう♪」
早速着てみる。
「へー着心地いいじゃん」
ついでにシーツとかも替えよ、と新一が買い物をしてきた紙袋の中を漁った。
「え?」
目にしたものを慌てて中から出す。
「コレ・・」
出てきたのは紺色のパジャマ。
自分が着ているパジャマと比べてみる。
「もしかしてお揃い?」
何だか、胸の奥がジンとなる。
近い場所にいることを許されている。
それだけでも十分に幸せ。
それなのに同じ空間にいて同じモノを共有してくれるなんて。
(こんなにも自分は側にいてもいいの?)
「快斗、洗濯するから汚れたもの出しとけよ」
言いながらドアを開けると
「新一ーvv」
と勢い良く抱きついてきた。
「ちょ、快斗!」
倒れないように踏ん張って非難の声を上げる。
「ありがと!」
嬉しそうな快斗の声に
「・・・なんだもう着たのか」
「すっごくすごっく嬉しい」
そこまで喜ぶ快斗を見ながら
「大げさだな」
言ってやる。
「だってお揃いだし」
その言葉にハッとして快斗の手にされてるものを見た。
「お前!いつのまに」
段々と赤くなる新一に
「ねっ、新一もコレ着てよ」
「今から?」
外を見ると太陽が一番高くに昇る時間。
パジャマを着る時間ではないはず。
「却下」
「えー着てよ、着てよ」
着て、着て、着て!と五月蝿く付き纏う。
「ああ!わかったよ!着ればいいんだろ!」
あまりの煩わしさに叫んだ。
目を輝かせる快斗に「あっちを向いてろ!」と怒鳴って手早く着替える。
「着たけど、で?」
着終わった新一が快斗を睨んで問う。
「へへへお揃いだね♪じゃあ、一緒に寝よvv」
一瞬、思考が止まった。
「はあ?」
(何がじゃあ、なんだ?!)
心の中でつっこんでみる。
「いいから、いいから」
何がいいのかわからないまま新一はベッドに引きずり込まれた。
「おい!オレは今から洗濯と片付けが!」
「そんなの後、後。いつでも出来るでしょ?」
ニッコリと微笑まれて思わず黙る。
「流石に病みあがりだから何もしないよ。ただ一緒に眠りたいだけ」
ね?と言われて渋々言われるまま布団の中へ潜る。
しかし数分もしないうちに静かな寝息が聞こえてきた。
「やっぱり最近、寝てなかったんだ」
ここ数日、自分が寝込んでから新一が休んだ気配が無かった。
熱を出せばこまめにタオルを変え、咳き込めば治まるまでずっと
背中を擦ってくれて。
それがどんなに嬉しかったか・・・。
快斗は気持ち良さそうに眠る新一の前髪を梳いてみる。
普段は口を開けば皮肉だらけで、口で負けそうになると足は飛んでくるし。
家の中と外では態度が全然違うし。
外では常に冷静であろうと張り詰めているのがわかる。
だけど自分は何もしてやれなくて。
だからせめて側にいる時ぐらいは甘えて欲しくて。
同じ舞台に立つときは相対する立場だから。「ホントにね、嬉しかったんだよ。新一の側にいていいんだってコトを駄目押しされ
たみたいで」眠ることは人間が生きてく上でとても大切な時間。
その眠りのために必要なパジャマなんてくれるわけが無い。「おやすみ、新一」
優しく額に口づけて快斗は新一を抱きしめたまま目を閉じた。
―― どうか今だけは眠りを妨げないで ――
おわり
深流様、ありがとうございます。心優しい新ちゃんと快ちゃんに、ハートが舞ってます(笑)。 快ちゃんにあげたパジャマはこんな色かなぁ〜? こういうほのぼのとした甘さは私には書けないだろうなぁ〜。 GALLERY