One's Own・・・

presented by 藤宮葵







「あ゛〜〜〜〜〜〜っ!!!
しっ新一ぃ〜!冷蔵庫にあったアイス食べちゃったでしょっっっ。」
快斗がキッドのシゴトから帰ってくるなり叫んでいた。
「ああ、何か急に食べたくなったから貰ったぞ。」
「ヒドイや〜〜〜せっかく楽しみにして帰ってきたのにぃ〜。最後の1個だったのにぃ〜。」
ぐすぐす…
よっぽどアイスが食べたっかったのか何なのか、ひたすらゴネている。
しかもまだキッドの扮装のままである。
「だあーうっとおしいっ!そんなに食われて困るならテメエの名前でも書いとけっ!」
世間様の誰があの『月下の奇術師』、『平成のルパン』などと言われている、
あの『怪盗キッド』がアイス1個でグズる姿を想像するだろうか?
快斗はまだぐずぐずとグズっていたが、突然何か悪戯を思いついた子供の様な笑顔を浮かべ
「わかった!じゃあアイスがナイなら他の甘いもの食べる!」
こう言ったかと思うと、いきなり満面の笑みを湛えて上機嫌になっていた。
快斗のコトだからどうせ他にも買い込んでおいたモノがあったのだろうと思い、
「ああ、それで我慢しとけ・・・」
妖しく色を変えた快斗の双眸にも気づく事もなく、『これでやっと静かに本の続きが
読めるぜ・・・』
とか思って軽く聞き流していた。
「じゃあ、そーゆーことでしんちゃん、俺に美味しく食べられてネv」
「っ!?」
俺の手から本を取り上げ、首に腕を廻しソファー越しにガバっと抱き着いてくる。
「なっなっ何言ってやがる〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!ソレとコレとどーいう関係があるんだ!」
廻された腕を振りほどき傍にあったクッションを抱え、それを盾に快斗へと向き直る。
「アイスを食べたのは新一、新一をオイシクいただけばアイスの間接チュウならぬ間接食べになるし、
俺もしんちゃんも大満足〜〜v」
何だか訳わからないことを言っていたが聞き捨てならない事も言っていた・・・。
「何で俺が大満足なんだっ!!!」
「・・・満足してるでしょ、いつも・・・。あ、まさかひょっとして満足してナイ?・・・」
ニヤニヤとヤラしい笑いを顔に浮かべ、悪びれもせずに言い放ってくる。
あれで満足出来ないなんてしんちゃんたらヴァンプなんだから〜vなどと、たわけた事を
言っていたのだが、その言葉は新一が快斗に言われて一瞬頭に浮かんだ自分達の情交に
思考を奪われていた為聞こえてはいなかった。
「そっそんなコト・・・・・」
うろたえながら思わず『そんな事はない』などと勢いで言いそうになったが、すんでの所で言いとどまる。
ここでそんな事を言ったりしたらそれこそそのまま美味しくいただかれてしまうだろう。
しかも何も言い返せない俺をわかっていて、快斗は更にとんでもないことを言いつづける。
「んじゃ今日はしんちゃんが満足するまでヤろうね〜〜〜〜vvv。
この俺の指技、舌技、ベッドテクを駆使して指1本動かせなくなるまでヨクしてあ・げ・るv」
獲物に飛び掛る前の野生動物のような舌なめずりせんばかりの表情をしている。
「帰ってくるなりサカってんじゃねぇぇぇぇ!このエロバカイト〜〜〜〜」
「もう遅いよ〜ん♪」
そんな会話(?)をしたのはつい先日の事だった。

まだ7月に入ったばかり、梅雨も開けてないというのに真夏並に暑い日。
いつもならどんなに快斗が頼もうと、こんな暑い日は外へ出掛けようなどと思いもしないが、
今日は特別。待ちに待った推理小説の新刊の発売日。
しかもなじみの書店なだけあって色々と融通を利かせてくれ、発売日の前日に手にする事が出来るのだ。
現金なものでこういう時だけは出掛ける支度も素早い。
「おーい快斗〜行くぞ〜。まだか〜?置いてくぞ〜。」
いつもとは逆に快斗を急かす。そして待っている間に玄関にある大きな姿見で自分の格好を確認する。
今日はあまりにも暑そうだったので、ちょっと気が早いかなとは思いつつも白いノースリーブの
開襟シャツにパンツは薄茶の麻素材の涼しげなものを選んだ。
ジャケットはどうしようか…と思ったがどうせ暑さのため脱いでしまうだろうし、帰りには本などの荷物も増えるだろうからと思い置いていくことにした。前から見たり斜に立って後ろ姿を確認したりと、新一自身は気づいていなかったがその姿はまるでデートに出掛ける前の女の子ように可愛く、そして新一にしては珍しくかなり浮かれているように見えた。

「新一、お待たせ〜」
快斗が漸く支度を済ませてパタパタとスリッパの音を立て階段を降りてきた。
「お前、遅い!遅すぎ!」
「しんちゃんたら、そんなに快斗クンとのデートが楽しみだったのねv」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ〜。とっとと降りてこいっ、置いてくぞっ!」
そんなことを階段の上と下でやり取りしていたら、
「あ゛〜〜〜〜〜新一その格好で出掛ける気?」
快斗は玄関で待っている新一の姿を視界に捕らえるなり叫んでいた。
「ああ、どこか変か?それに今日は死ぬほど暑いだろ?ジャケットなんか着てられねぇよ。
どうせ帰りには荷物も増えるんだし、邪魔になるだけだろ?」
ノースリーブの袖口から露わになった白い腕とか、腕が動くたびに袖口から胸元が
見えそうで見えないチラリズム。
そして何より開襟シャツの襟ぐりから見える鎖骨とか首筋とか襟足が艶かしい事この上ない。
自分の目には嬉しいことこの上ないのだが、これで外に出たら狼の群れの中に仔羊が
迷い込む様なものだ。
「ダメーーーーーっ!絶対ゼッタイぜぇ〜〜〜〜ったいにダメっっっ!!!!」
新一は訳解らない事をギャーギャーと騒ぎ立てる快斗に多少の頭痛を感じながら、
自分としてはとにかく早く本屋に行きたかったのでドアに手をかけ有無を言わさずに言い放つ。
「何ワケ分かんない事言ってんだよっ!勝手に騒いでろ。俺は1人で出掛けるからなっ!じゃあな」
何かを考えたのかあれだけ騒いでいた快斗が突然黙りこくり、ドアを開け外へ出ようとしていた新一の腕を掴んだ。
「・・・快斗?」
「名前かいとこう。」
「へ?」
快斗がいきなり訳わからない事を言い出した。
「だ・か・らv新一は俺のって名前かいとくの。だってこの間新一が言ったんだよ?
『食われて困るならテメエの名前でも書いとけ』って。」
「はぁ?」
そして言うが早いか快斗に抱き寄せられ襟元からのぞく白い首筋を強く吸われた。
「おいッ!」
「ん〜vvv」
「何してるんだッ!?」
快斗は悪びれる風でもなく笑いながら返してくる。
「だから他のヤツに食べられちゃ困るからね。名前書いてるのvvv」
流石マジシャンだけあって口が達者に動いていても不埒な手は止まることはない。
いつの間にかシャツのボタンをはずし、首筋あたりを動いていた唇は襟元まで移動し、
舌で鎖骨をなぞり露わになった胸元に朱い小さな華を散らしている。
そして快斗がこれだけで終わりにするハズもなく・・・・・

「ばっばかやろ〜〜〜〜っっっっ!出掛けられねぇじゃないかぁぁぁぁぁ・・・・」

梅雨の合間の爽やかな空に新一の虚しい叫びが木霊していた。





BACK