MEMORIAL DAY

by chiyono


目が覚めて、ふとカレンダーが目に入った。
そっか、今日は・・・そう思いつくと、誰にも何も言わずに家を出た。
少しくらいなら連絡をとらなくても大丈夫だろう、などと安易に思いながら。

組織を壊滅させて数ヶ月、コナンから元の体に戻って、1ヶ月ほど経っていた。
久しぶりに一人で、外出して辿り着いたのは小さな公園で、甘い香りのする方へ
歩いていく。こんなに小さな木だったのだろうか?と思いながらあの日の事が思い浮かぶ。

一年前の深夜、ここであいつと友人になった。
きっかけは、俺が柄にもなくこの金木犀の下で泣いていたから・・・。
いや、一人じゃないと泣けなかったから。
もし、あの時声を掛けてくれなければ、きっとあのまま周囲の人間の前から消えていただろう。
それほどまでに精神的にも肉体的にも追い詰められていた。
だから、相手が怪盗KIDだとわかっていたのに差し出された手を取った。
それから週末ごとに逢う度に少しづつお互いのことを話していった。
そして、快斗の事、KIDのことを知り、お互いの心にある闇の部分に気づいて、
こいつも俺と一緒なんだと、そう思い至ってから、あいつの側に居たいと思うようになった。
そして、それが恋心に変わって行くのにそれほど時間はかからなかったけれど、
あいつにそれを告げようとは思わなかった。
理由は、お互いの目的を達成していなかったし、
同性を好きになった事が少し恥ずかしかったと言う事もあった。

そんな事をぼんやりと思い出しながら、同じ場所に腰を下ろして山吹色の小さな花々を
見上げていると声を掛けられた。
「やっぱり此処にいたんだ!黙って、出かけるから哀ちゃん心配して探しているよ。」
「快斗・・・どうしてここが解ったんだ?」
「今日ってさ、KIDの正体をコナンに明かした日だもの。」
「覚えてたのか?」
「忘れるわけないよ、一目惚れした相手に本当の俺を見てもらった記念すべき日なんだもの。」
「え!一目惚れって何時の話だよ。」
「言わなかったかな?会う度に話してたはずなんだけど・・・ほんと自分の事には鈍いんだよね名探偵は!」
「鈍くて悪かったな!!」
「うん、そこがいいんだけどね。」
そういうと時計塔の時に初めて対峙してから色々調べているうちに一目ぼれしたんだと打ち明けてくれた。
俺は聞き間違いじゃないかと暫く呆然としていると快斗は横に来て座り、耳の側で囁やいてきた。
「新一、愛してるよ。」
今度は恥ずかしいのと嬉しいのでどう表情をしていいかわからなくて複雑な顔をしていたらしく、
快斗はとそれを拒絶されたと思ったようで、今の事を忘れてと言われて、俺は慌てて、首を横に振ると、やっと聞き取れるくらいの小さな声で自分の気持ちを告げた。
「快斗・・・俺も、おまえの事好きだ・・・。」
この言葉で快斗の顔がパッと明るくなった。
そして、じっと俺の瞳を見詰めてそっと、慈しむように唇を重ねると、次第に深い口付けへと変えていく。

息継ぎが上手く出来なくて少し苦しくなった頃、快斗はやっと離れていった。
「本当はもっと前に何度も告白しようと思ったんだ。でも、新一がコナンだった事や
探偵だと言うことを考えたらどうしてもいえなかった。それに、蘭ちゃんの事もあったから・・・。
だけど、組織もなくなってパンドラも見つけて砕いたから・・・」
「ちょ、ちょっと待て!パンドラ見つかったのか?」
「うん。20日位前だよ。新一が解毒剤の副作用で眠り続けている時だったから・・・」
ひと月前、完成した解毒剤を服用した新一は、体は元に戻ったものの薬の副作用で、
2週間眠り続けた。そして、覚醒したあとも、中々体力は回復せず、ほんの数日前に
やっとベットから起き上がれるようになったばかりだったのだ。

「それじゃKIDは?」
「廃業だよ!ただ中森警部に何も言わないで消えるのは申し訳ないかなとは思ってるんだけど・・・。」

突然、快斗の携帯が鳴り、ディスプレイを見てしまったという顔をした。
「もしかして、灰原か?」
「そ、ミイラ取りがミイラになったって怒られそうだよ。」
苦笑いしながら通話ボタンを押して話し始める横で俺は、快斗に凭れて横顔を眺めていた。
両思いだったのが嬉しかったのと色々な意味で安心した事で、そのまま眠ってしまったらしい。

灰原と話をしながら規則正しい寝息が聞こえ始めたのに気づいた快斗は、
博士に車を出してもらうように頼むと、通話をきって携帯をポケットへしまう。
体が冷えないように自分の羽織っていた上着を新一にかけると抱き上げて金木犀の下から、
すぐ側にあるベンチへと移動する。
「新一、俺を受け入れてくれてありがとう。愛してるよ。ずっと、側にいるから・・・。」
そう囁くと、そっと額にキスをして、一年前と同じ場所で友人から恋人へと進めた事を
金木犀の木に感謝した。



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