いつか見た夕日は

とても綺麗で

あなたの横顔と共に

脳裏に焼きついた






夕日の中の情景

by 摩羅






「しーんいちっ!」

 リビングで本を読んでいた新一に後ろから抱き付いてやる。

「‥‥‥なに?」

 そっけなく返される返事。けれど、それでメゲていては新一の相手は勤まらない。

「あそんで!!」

「俺、今本読んでるんだけど‥‥」

「いいじゃん。快斗君がいるのに、新一は本に夢中なんだもん。ヤキモチ焼いちゃう
よ」

 新一は、溜め息をつきながらでも、本を閉じてくれた。こういう優しいところも好
きだ。でも、本当に読みたい本があるときに邪魔すると、すっごく不機嫌になるけ
ど。

「で、何するって?」

「行きたい所があるんだけど」

「行きたい所?」

「まあ、まあ。それは行ってからのお楽しみ!」

 俺は背中を押して、新一を連れ出し、その場所へと車を走らせた。





「ここは?」

「最近、見つけたんだけど、けっこう夕日が綺麗だからさ。一度新一と一緒に見たく
て」

 俺がそう言うと新一は、仕方ないなという顔で微笑んだ。

 新一は視線を夕日に向け、少し目を細めた。

 そのまま、俺も夕日を見ていた。

「きれいだな‥‥‥‥」

 2人して夕日に見とれていた時、ふと新一が零した言葉。それにつられて新一を見
やる。

その瞬間、俺は言葉を失ったまま、動けないでいた。

 淡い赤色が混じったようなオレンジ色のやわらかい光に目を細めた新一。



 綺麗だ______________。



 現実味を伴なわない一つの情景が、そこに出来上がっている。ビルの影さえも新一
を称えているように見えて。

 その表情のまま、ゆっくりと新一は俺に向き直った。

 新一が近づいて来る。でも、それさえも夢で見ているような感覚を覚えた。

 俺はずっと、それに魅入られていた。







あ‥‥‥‥なんだか唇にやわらかい感触がする。







感触??






 

かんしょくぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?






 気が付くと、目の前には新一の顔があって。

「何ボケッとしてんだよ」

「えっ、いや、あの、その‥‥」

「大丈夫か?」

 俺のあたふたした姿に苦笑した新一。

 今、そんな顔するの、ズルイだろ。

 一つの仕草にも見惚れてしまうのに。

「もうそろそろ帰るか」

「そっ、そだね‥‥‥ハハ」



 ダメだっ!!



 新一の顔がまともに見れない!



 何といっても、新一が自分からキスしてくれるなんて滅多にない。

 すっごく心臓がバクバク言ってる。

 俺はなるべく新一の顔を見ないように踵を返した。

「‥‥快斗」

「ン?何‥‥‥‥」

 俺が答えると同時に新一が肩に腕を回してきて。

「し、しんいち!?」

「な〜に照れてんだよ‥‥‥んな顔されると、俺の方が恥ずかしーだろ?」

「だって!!‥‥‥‥‥‥新一からキスしてくれるなんて、珍しいし思ってもみな
かったし‥‥‥」

 だんだんと小声になってつぶやく俺を新一は軽く小突いた。

「バーカ」

「んだよぉ」

「早く帰ってメシにしようぜ」

 ぼーっっと突っ立ったままの俺に構うことなく、新一はもう車を止めてある場所ま
で歩いていた。

「あと、10数えるうちに来なかったら、置いて帰るからなーーー!」

 と、新一は叫んだ。

 言ってくれるぜ、新一のヤツ。

 この快斗様をナメんなよ!

 俺は口を引きしめると同時に、キッドの時と同じ不敵な笑みを浮かべる。

「怪盗をナメちゃいけねぇな、名探偵!」

 俺は、その言葉を合図に走り出す。

 無邪気な笑みを浮かべて待つ新一のもとへ。



 俺の愛するべき人のもとへ‥‥‥‥‥‥。






Fin.



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