「だぁ〜〜もうッ!ちっともわかんねぇッ!!」

紫陽花が色鮮やかに染まる水無月6月。

ここ米花町にある豪奢な洋館では、稀代の名探偵と誉れ高い工藤新一が、どんな難事件のトリックに挑んでいるのだろうか、その秀麗な顔(かんばせ)を顰めていた。






+++Maid Reloaded






「なぁ、快斗」
「ん?」
「お前・・・何か欲しいモンあるか?」
「なに?どうしたの急に」
「明日・・・って、もうすぐ日付変わるけどお前の誕生日だろ。何かプレゼントって思ってずっと考えてたんだけど結局思いつかなくて、さ・・・それで・・・」
照れくさいともバツが悪いとも取れるような表情(かお)の新一の様子に、快斗は微笑みを深くする。
「ありがと。でもそんな無理にしなくてもいいよ?その気持ちだけで充分・・」
「でもそれじゃぁッ!」
みなまで言わせず言葉を遮るよう言い募る新一の姿に、快斗の悪戯心が動き出す。
「じゃあさ、」
それは、意図して少し低められた声。
「俺のお願い聞いてくれる?」
「お願い?」
「そう、お願い。」
「お願い聞くって・・・ホントにそんなンでいいのか?」
聞き返す新一に、快斗は殊更に念を押す。
「うん。聞いてくれる?」
「おぅ・・・、」
妙に念を押す快斗に新一は少しの疑念を抱きつつも、『快斗の誕生日の贈り物』という事象に その疑念は形を結ばず、それは新一の内で霧散する。
「・・・ンでそのお願いっての、何なんだよ」
「コレ着て?」
にっこりと微笑む快斗の手にあったのは、先だってとんでもない目に遭い、二度と目にしたくなかったシロモノ、メイド衣装一式。
「ッ!!なッ・・・、」
新一に渡されたそのメイド衣装は、今回のはスカート丈が異様に短い。
そして一緒に渡された下着類はレース使いを基調にしているのは変わらないが、その色使いは黒。
白いブラウスにその黒が異様に映えて、なんだか妙な面映さを醸し出している。
「着て・・・くれるよね?」
快斗のその問い掛けは、何処か空々しい確信犯的なニオイ。
そしてそんなモノを一体何処に隠してあったんだと聞きたくなってしまう、いつもながらに鮮やかな手管。
さりとて、ソレはソレ。コレはコレ。
新一とて我が身は可愛い。即行で却下する。
「却下だ却下ッ!ンなのッ、ジョーダンじゃねぇっ」
「だって・・・俺のお願い聞いてくれるって・・・」
先程までとは打って変わった、しょぼんとした快斗のその態度。
その姿はさながら、主人に叱られ尾を垂れた犬の様。
「新一からのプレゼント・・・」
あまつさえ床に『の』の字を書いていじける始末。
それが半分は演技だと解っていても、何処か罪悪感を感じてしまうのは、自分が言い出した事だからだろうか。
「ったく・・・・・・・、」
結局俺も大概コイツには甘いよな、などと思う内心を新一は溜息にして吐き出す。
「・・・・・・・・・・・今回限りだぞ」
「うんッ!では早速vvv」
言うが早いか新一の目の前を白い何かが翻る。
「?」
何が起きたのか判らず、新一が呆けた数瞬後。
「じゃ〜ん♪メイド新ちゃんの出来上がり〜vvv」
あっと云う間に全てのモノ・・・勿論下着類までもをだ、着せ掛けられている。
それは、これまたどうやったんだという程の手際のよさ。
快斗のマジシャンとしての腕は超一流だが、こういった時にはそれ以上に、それを上回る手腕を発揮する。
(・・・コイツって、絶対に才能を無駄に使ってるよな)
人から見たら感嘆に値するそれも新一にしてみれば呆れたのただ一言。
その快斗はと云えば、右に左に後ろに前に隅から隅までその姿を堪能し、満面の笑みを湛えご満悦の様子。
「やっぱ新一ってば美人サン〜〜〜〜vvv」
けれど快斗から新一に向けられる視線には、それ以外の何かが混じっている。
熱を孕んだ視線。
感じる居心地の悪さに、新一の頭の隅で、迫り来るであろう身の危険の警鐘が響きだす。
「もう着たんだからいいだろッ」
快斗の返事を待つまでも無く、新一は快斗の視線から逃げる様に身を背けると、さっさと釦に指を掛け、脱ぎ始める。
しかしその指は、白い手袋の手指に絡め取られる。
「ナンだよ、もういいだろ・・・・?」
顔を上げると耳朶に吐息が吹きかかる程の至近距離で囁かれる。
「まだだよ、新一」
「ッ!?」
ヤバイと思った時には時既に遅し。
ニヤリと愉しげに笑うその表情(かお)は、姿形ともに白い怪盗のモノ。
「お楽しみはこれからですよ、私の誕生日を祝って下さるのでしょう、可愛いメイドさん?」

こうして新一にとっては悪夢の再来の1日を、そして快斗にとっては至福の1日となる誕生日を迎えたのだった。







・・・この後に続くのは愉しい(?)「バロン様と屋敷に仕えるメイドさん」ごっこです。 勿論えろ。でも自主規制(笑)。


と、藤宮葵様から『Costume Play』の原稿の陣中見舞いとしていただきました。
葵様。いつもありがと〜!です。

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